児玉陽子の正しい「食養」のすすめ

エナジック代理店向け広報誌「Global E-Friends」

2019.11.1~2020.12.15に23回掲載されたものを転載しました。

第11回

肝硬変を治した「肝臓食」のキモとは?

松井病院食養内科には、「内科」と銘打ってはいたものの、実に様々な症状の患者がやってきました。 診察科目でいうと、循環器科、消化器科、呼吸器科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、皮膚科、アレルギー、老年病、小児科、そして心療内科などなど。産婦人科関係の患者だって来るほどで、老若男女が押し寄せてくる盛況ぶりでした。しかもそのほとんどが、ほかの病院を転々として、もはや手の施しようがない、とされた重篤な患者でした。

そんな患者の中で印象に残ったケースを、これから順次、取り上げていってみたいと思います。

まずは54歳の男性Aさん。身長が174cmあり体重が74kgでやや太り気味。彼は40歳の時に黄疸があらわれて2週間ほど入院した経験があります。その後、元気になったものの、食養内科に来る5年前に全身がだるく立っていられないほどひどくなり、自宅近くの病院に入院しました。

検査の結果、 肝機能を測るさまざまな検査で基準値を大幅に上回り、明らかに肝機能障害が認められました。

■高タンパク食は忌避

 近所の病院に入院している間は、肝機能障害に効果があるとされた高タンパク・高エネルギーの食事を摂るよう指示を受け、牛乳・卵・新鮮な野菜などを摂取していたといいます。しかし倦怠感が取れないどころか、ひどくなってしまい、また太り始めたことにも気づき「おかしいな」と思った段階で食養内科を受診したのです。

前号で紹介したように、食養内科では初診に時間をかけて、症状だけでなく、患者の生活や仕事などをいろいろな角度から聞き出して治療に役立てます。

ここではAさんから聴取した食生活に限って紹介してみます。まず大の酒好き。晩酌で日本酒を1~1升半も飲んで いたというのですから、 まさに 「鯨飲」ですね。さらに肉類など脂っこい食べ物や香辛料のきいたものが好きで、おまけに清涼飲料水も好んで飲んでいたとのこと。こんな食生活を送ってきたツケが、全身の倦怠感、口渇、肩こり、便秘、腹部の膨満といった症状に表われてしまいました。加えて、右ろっ骨下に肝臓のでこぼこがあり、皮膚の表面から血管が透けて見えるクモ状血管腫も認められました。X線検査では、食道と胃に静脈瘤があり、脾臓も腫れていました。結局、肝硬変と診断されました。

松井病院に入院すると、ただちに食事療法を開始。食養内科では、高タンパク・高エネルギーの食事ではなく、バランスを重視した1日1600kcalの肝臓食を出しました。

その結果、 2週間後には肩こりと便秘がおさまり、3カ月後には体重が13kg減って疲労感もなくなりました。 静脈瘤も安定し、6カ月後には週の半分の就労が可能となり、1年後には自覚症状が消えてフルタイムの就労ができるようになりました。Aさんはこうして社会復帰した のです。彼はたいへん喜んでいました。

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2019.11.1~2020.12.15に23回掲載されたものを転載しました。

第12回

日本人最多の「大腸ガン」と闘う食事

国立がん研究センターが発表した 「2019年予測」 によると、男性が572,600人、女性は444,600人がガンに罹患すると予測しています。

部位別にみると、大腸ガン(15万5,400人)が1位を占めました(男性は1位で女性は乳ガンに次ぐ2位)。大腸ガンは2位の胃ガンを3万人以上も上回っています。2015年予測以来、 大腸ガンはずっと1 位です。ではなぜこのように増えてしまったのでしょうか。

最も大きな原因として考えられるのは、わたしたち日本人の生活環境、とくに食事の変化の影響です。1970年代後半とずい分前ですが、ハワイやアメリカ本土に移住した日本人は胃ガンが減り、大腸ガンが白人並みに増えた、という興味深い研究結果が発表されたことがあります。

この調査からわかるのは、ガンの発生には人種的・遺伝的な要因より、食事など環境要因が大きくかかわっていることです。また、2007年に世界ガン研究基金(WRCF)とアメリカがん研究協会(AICR)が出した報告によると、赤肉・加工肉、肥満、アルコールが大腸ガンのリスク要因になるとしています。

59歳女性患者の食養実践

 戦後、わたしたちの食生活は欧米化し、肉類や牛乳などの乳製品等から高脂肪分を多く摂るようになりました。逆に繊維質の多い野菜や果物の摂取が減りました。これはそのまま大腸ガンの原因になるものです(加えて、アルコールや喫煙も重大な要因と考えられています)。したがって、予防のためにも、また 罹患してからも、食生活の改善—ひと言でいって和食の復活――が大切な要素になります。

では具体的にはどうしたら良いのか。松井病院食養内科で、わたしが食事指導をした女性大腸ガン患者の例を引いて、考えてみましょう。

患者は59歳の女性。大腸の中の結腸にできたガンを手術で切除。手術以前には、お米よりパンとケーキが大好きで、また豚肉を好んで食べていました。術後、わたしは食生活の改善のため、次のような指導をおこないました。

パンを玄米に、豚肉を魚に変えて、地産地消が可能な季節の根菜類等の野菜を中心にし、とくに毎日、小松菜を100gほどお浸しにして食べてもらうようにしました。また、キノコ類や海藻も毎日必ず食卓に乗せるよう指導。さらに、料理には砂糖を使わず、味付けを薄くして主に酢で味付けをするようにしてもらいました。

避けてもらったのは、獣肉類、パンとケーキ類、天ぷら、刺身等。漬物も植物性で繊維の多い大根、白菜、青菜などを中心に。果物はリンゴをメインにしました。食事以外にも、便秘にならないようにする、夜更かしを避ける、適度な運動をする、ストレスをためない、といったアドバイスもしました。これらを受け入れて、きちんと実践した彼女は、ガンが再発することもなく過ごしています。胃腸症状に良い還元水も飲用していたら、もっと早く効果が出ていたかもしれません。

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第13回

“温性食材”で冷え症対策を!

今回は「冷え症」を取り上げてみます。その症状は、手足の先の四肢末端や上腕部、大腿部、へその下あたりが温まらず、冷えが自覚されている状態を指します(中には無自覚の人もいますが)。

冷え症と言えば、女性に多い症状として知られています。もちろん個人差はありますが、 女性の半数から7割近い人が冷え性に悩まされているとされるほどです。なぜか? 女性は男性に比べると熱を作り出す筋肉量が少なく、 また皮膚の表面温度も低く、さらに貧血や低血圧の人も多いためと考えられています。

だいぶ前ですが、 九州の 『西日本新聞』に、ある女子高のクラスの半数の体温が35度台で、生理不順も多く、便通も悪いとする記事が載りました。もともと子どもの体温は成人より0.5度程度高いものです。 それが真逆の結果でしたから、強く印象に残ったのです。こうなると、男性より筋肉量が少ないから、という理由だけでは済みません。悪しき生活習慣が絡んでいるのではないか?

エアコンの普及、衣服や食生活の変化、夜型生活や運動不足、ストレスの増大など、日常生活で身体にとってマイナスとなる習慣が常態化し、それが冷え症に結びつくのでは、と思われるのです。冷え症もいわば「生活習慣病」の一種ととらえられるでしょう。それは、とくに食生活との関係で言えることです。

■低体温は病気を誘発!

人の胃や腸などの消化管内では、消化のさいに入ってきた飲食物を温めることで熱が消費されます。 したがって、飲食物の温度は身体の「冷え」に大きくかかわってくるのです。 さらに、胃腸の中の消化酵 素がもっともよく働くのは36~37度とされています。これを下回ると、人が本来持っている消化機能が100%発揮できなくなるのです。

したがって、冷え症を誘発しかねない食生活は避けなければなりません。冷たいビールのガブ飲みや、真冬に暖房を効かせてアイスクリームをたくさん食べたりすることは良くありません。体温が下がると血流が悪くなり免疫力も下がって、いろいろな病気にかかりやすくなります。冷え症を防ぐには体の熱を保持する必要があるため、温かい食品を摂取することが望まれます。古来より中国では、すべての食べ物を温性、冷性、その中間の平性に分類し、冷え症の人には、温性の食物を多めに摂るよう勧めてきました。わたしがいた松井病院の食養内科でも同様の食事対応をしていました。

そこで温性の食材を紹介してみましょう。 穀物ではもち米、ライ麦。油脂類はごま油、豆類はグリーンピース、そら豆、納豆。種実はクルミ、栗。魚介類はアジ、サバ、イワシ、フグ、海老、タイ、カツオ、ブリ、 あなご、うなぎ等。肉は羊肉、鶏肉、鹿肉。果物は桃、リンゴ、ざくろ等。野菜は根菜類が特にお勧めです。 ニンジン、ダイコン、ゴボウ、カブ、レンコン、ジャガイモ、サツマイモ、ヤマイモ、サトイモ、ショウガ、ネギ、ワサビなどですね。 玉ネギ、ニラ、 ニンニク、シソ等もいいですね。

日ごろ冷え症に悩んでいる人には、こうした食材を使った食生活をぜひお勧めします。

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第14回

「日本型食生活」で肺ガンに挑んだ女性Aさん!

国立がん研究センターの2014年推計値によると、日本ではガンに罹る確率は男性が62%、女性は47%にのぼるとしています。つまり、男女合わせてわたしたちの約2人に1人は生涯で、ガン患者になるというわけです。ではガンに罹患してからの「行き末」はどうなのでしょう。

同じ研究所の2017年データによれば、男性22万人、女性15万人がガンで死亡しました。全死亡者に占めるガン死亡者の割合は男性が25%、女性は15%です。男性の4人に1人はガンで亡くなる計算です (女性は7人に1人)。

要約すると、ガンが原因で亡くなる人は全ガン患者のおよそ半数です(逆に言えばガンに罹っても半分の人はガンが原因では亡くなりません)。

発症したガンを部位別にみると、男性は肺ガンがトップです。女性も大腸ガンに次いで肺ガンが2位で乳ガンを上回っています。肺ガンは男女とも高齢になるほど発症の確率が高くなります。

そうならないために、あるいはなってしまってからのために、今回は、 「食養」で肺ガンに挑んだ女性Aさんのケースを取り上げてみます。

■「標準治療」を拒否した理由

 わたしが勤務していた松井病院食養内科に診察を受けに来たとき、Aさんは60歳でした。他の大学病院で右肺上葉に1cm大のガンがあると診断されていました。皆さんご存じのとおり、ガンの標準治療には手術、抗ガン剤、放射線の3つがあります(ほかに免疫療法も盛んになって来ていますが)。

しかしAさんには標準治療をためらう理由がありました。

というのも、やはり肺ガンで亡くなった実姉の辛い闘病例を間近に見ていたからです。姉は標準治療を受けながら入退院を繰り返し、薬剤の副作用にも苦しんで、ほぼ寝たきり状態で亡くなったというのです。結局、Aさんは手術を選択せず、わたしたちの指導を受け入れて、「食養」 を中心にしたあるべき生活習慣を徹底する道を選んだのです。

それは、十分な睡眠、早寝早起きの励行、風邪をひかないよう注意する、足湯と半身浴、さらに部屋の環境をクリーンにするための空気清浄機の導入等の完全な実行でした。

食養面では、「日本型」を基本とし、次のような食生活を長年、履行しつづけました。

食材は地産地消のオーガニックの野菜を中心にして少量の海草を毎日食べ、タンパク質は白身魚や小魚、大豆製品から摂取。そして熱帯産の野菜や果物、ナッツ類は少量に限りました。同じく避けたり制限したりしたのは、間食、清涼飲料水、砂糖、脂肪分、塩分でした。

逆に奨励したのは、発酵食品や玄米食、5~6種類のキノコを干してから煎じて飲むことなどでした。水分は毎日浄水を適量飲むよう促しましたが、いまなら還元水の飲用を推奨したでしょうね。Aさんは正しい生活習慣を守りながら、こうした食材をよく噛んで腹八分目を原則に摂り続けた結果、24年後のいまでも 元気に過ごしています。

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第15回

激痛発作の痛風と戦うための食生活

痛風(高尿酸血症)は患者の90以上が男性で、比較的中高年に多い病気です。原因は血中尿酸が増加して関節などに結晶化し沈着することで、血中尿酸値が7.0mg/dl以上になると高尿酸血症と診断されます。

数値が上がっても放置しておくと、ある日突然、足の親指の付け根などの関節が赤く腫れて痛みだします。それは激烈で、耐えがたいほどです。

ただし多くの場合、1週間から10日ほど経つと治まり、症状もなくなります。そこで油断していると同じような発作がまた起こってしまいますから、その前にきちんと対応する必要があるのです。

それを怠ると、今度は足首や膝の関節まで腫れはじめ、発作の間隔が次第に短くなってきます。やがてひどくなると、腎臓が悪くなったり尿路結石ができたりする場合もあります。放置はたいへん危険なことなのです。

この痛風には、プロシア国王フリードリヒ大王やフランスのルイ14世ら多くの王侯貴族が悩まされていたとされています。そのため古くから欧米では美食家、大酒家がかかる「帝王病」とか「ぜいたく病」などと呼ばれていました。痛風と食生活の関係はたいへん深い、ということは以前から理解されていたのです。

そもそも尿酸は人体内でプリンタ体という成分が分解してできます。そしてプリン体は肉類(とくにレバー)や甲殻類、ビールといった、「粗食」とは縁遠い食材に多く含まれているのです。

■アルカリ性食品の摂取を!

 興味深いことに、日本では明治期まで痛風は「なかった」とする研究があります。 実際に増えるのは戦後で、 しかも1960年代以降。これは明らかに食事内容が欧米化し、動物性タンパク質と脂肪分の摂取量が増えたことや、飲酒量の増加などによるものと考えられます。

わたしが実際に食養指導をした男性の中にも痛風の患者さんがいました。たとえば、当時58歳の会社経営者で軽度の肥満だったUさん。 わたしが担当する5~6 年前に痛風および高血圧症と診断され、血圧降下剤の服用と肉類を少なめにする、との指導を受けていました。

しかし右足のかかとが痛み出し、やがて歩けないほどの激痛に襲われました。その後も、足の親指やひざが痛み、便秘がちで食欲も減退。そこで松井病院・食養内科へ受診に来たのです。入院したUさんに食生活を聞くと、天ぷら、トンカツ、甘い菓子類が大好物で、あまり気にせず肉類を食べていたとのこと。

そこでまずプリン体を多く含む食品を避けるようにしました。さらに、尿酸は酸性になると結晶化しやすくなるので、野菜や海草などのアルカリ性食品を摂るようにしました。主食は玄米に変え、タンパク質は大豆製品で。青汁も飲用してもらいました。基本的には肥満防止に資する食事内容だったといえるでしょう。

尿酸排出促進剤と漢方薬も使った結果、 入院後1カ月で便秘は収まり、関節痛も徐々に軽くなって、 2週間後に退院に至 りました。その後も食生活に注意し、元気に過ごしていると聞きました。食生活の改 善こそ痛風撃退の最大の武器なのです。

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第16回

辛い貧血と戦う食事療法はコレだ!

貧血とは血液中の赤血球の中にあって、酸素を全身の細胞に運ぶ働きをしているヘモグロビン(血色素)が、基準値より減少した状態をいいます。このヘモグロビンをつくるのが鉄分であることは皆さん、ご存じのとおりです。さらにもう一つ「フェリチン」というタンパク質も貧血に大きくかかわっています。

ヘモグロビンとフェリチンの関係は「現金」と「預金」のようなものでしょうか。体内の約70%の鉄分は赤血球の中にヘモグロビンとして存在し、日々使われ (支払われ)て、残りはフェリチンとして主に肝臓の細胞の中に貯蔵(預金)されています。 そしてヘモグロビンが不足すると、フェリチンがその補充のために登場するというわけです。

日本人女性の場合、半数が貧血およびその予備軍とされているほど多数に上ります。症状は、だるさ・めまい・不眠・頭痛・動悸・息切れ・吐き気・食欲不振等々、多岐にわたっています。

こういう貧血症状のほとんどは、ヘモグロビンの材料である鉄分の不足がもたらすので「鉄欠乏性貧血」と呼ばれ、貧血全体の約7割を占めています。

原因は多岐にわたります。女性に多いのが継続的な出血である生理による貧血。出血量が多いと重度の貧血になってしまうことがあります。

さらに、潰瘍(かいよう)痔疾(じしつ)などによる出血や、妊娠・授乳などで鉄分の補給が間に合わないことなども原因に挙げられます。あるいは、若い女性に顕著なのですが、無理なダイエットによる食事制限がもたらす貧血もあります。

■実践した「貧血食」の内容

 重度の貧血の場合、輸血や薬物療法などをおこないますが、多くは、鉄分補給を含む食事のあり方がカギを握っているといえるでしょう。以下では、わたしが松井病院の食養内科で実際に指導した食養方法を述べてみます。

三十代前半で妊娠八カ月の主婦が、全身の強い倦怠感や手足の極度の冷えなどを訴え来診しました。 検査の結果、「妊娠貧血」と診断されました。鉄の吸収障害や尿タンパクも認められ、軽い腎障害のあることも分かりました。入院と同時に 「貧血食」を指示しましたが、胎児の発育も考慮する必要があり、1日にエネルギーは1800kcalでタンパク質は70gとし、食塩は5gに制限しました。

さらにゴマを1食に付き25gほど使用 し、ニンジン汁200mlも摂取するようにしました。 ゴマは鉄分だけでなく、 良質な植物性脂肪とカルシウム、ビタミンB1の補給にもつながる重要な栄養素です。その ほかに漢方薬も服用してもらいました。すると手足の冷えが次第に薄らぎ、強い倦怠感も緩和するようになって体力が付き、無事に出産することができたのです。 産後の経過もよく、赤血球ヘモグロビンともに正常値に戻りました。

「貧血食」には鉄分を多く含む、以下のような食材が不可欠です。煮干し、ゴマ、レバー、卵黄、 海草、 シジミ、カキ、緑黄色野菜など。そしてこれらの食材を、ほかの食材と共にバランスよく摂ることが肝要です。貧血と戦う最強の武器は、「正しい食養」なのです。

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第17回

この食事療法で高血圧に挑む!

日本にはいったいどのくらい高血圧患者がいるのでしょうか。厚生労働省が1980年から10年おきに実施している大規模調査「NIPPON DATA」の2010年版では、男女合わせて何と4,300万人が高血 圧症としています。成人のほぼ2人に1人 という高率です。

症状がない人も含め、高血圧状態にある人が驚くほど多く存在していることは間違いありません。放置しておくと、動脈硬化を引き起こすなど、重篤な状態に陥る可能性が高くなりますから、的確な対処が必須なのです。

そもそも高血圧はなぜ生じるのでしょう。最も多いのが「本態性高血圧」と呼ばれ、遺伝的に(親から)高血圧を受け継ぐパターンです。さらに食塩の摂りすぎなど、誤った食事が誘因になることもしばしばです。

したがって親が高血圧で、かつ塩分の多い食事を摂っているとすれば、ほぼ間違いなく高血圧になるといっても過言ではありません。

高血圧の症状としては、動脈硬化から来る頭痛、耳鳴り、肩こり、めまい、手足のしびれ等があります。 また、 物忘れや不眠症などの症状も見られます。高血圧状態が長期化すると、血液を送り出す心臓が 肥大し、動悸・息切れなどを引き起こすこともあります。

さらに悪化すると、心臓ぜんそくや狭心症、心筋梗塞など、「死に至る」症状さ えもたらすことがあります。 さして症状がないからといって高血圧を放置しておくと、手痛いしっぺ返しに合うことになりかねないのです。

■ある肥満男性の奮戦記

 松井病院・食養内科では多くの高血圧患者さんの食事指導をおこないました。たとえば身長167cmで体重79kgの肥満の男性 (54歳)。

来院する4年前に高血圧性心不全と動脈硬化と診断され、薬物療法を受けていました。しかしその後も、動悸や吐き気に襲われたり、疲れやすく風邪もひきやすかったり、といった症状に悩まされていたそうです。

検査の結果、軽度の心臓肥大や高コレステロールなどが認められました。また、普段の食事内容を聞くと、 肉類などの脂っこいものを好み、野菜や果物、海草は敬遠し、お酒が大好物で毎日2~3合は飲んでいたと言います。

入院と同時に、食塩を16gまでに制限する高血圧食を提供し、青汁を毎日 200ml飲んでもらいました。すると4日後には血圧が最大110mmHg最小 84mmHgまで下がり、頭痛や肩こりが薄らいできました。

そこで10日後から2日間の減食に入り、続いて1週間の絶食療法を施しました。終了後は最大血圧104mmHg、最小血圧80mmHgとなり、諸症状も消失して退院の運びとなったのです。その後も、十分に養生し、血圧降下剤とは無縁の生活をしていると聞いています。

以下に、高血圧症患者向けの食養をまとめておきました。 酸味をうまく使って塩分を抑制し、野菜を多く摂ることで空腹感を抑え過食を慎み、タンパク質は白身魚や植物性食品から摂る、といった食事内容が勧められます。主食も玄米等の未精白米や雑穀が望ましく、海草やシイタケなどもお勧めです。

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第18回

もはや“国民病”か?糖尿病と戦う方法!

今回は糖尿病を取り上げてみます。厚生労働省の2018年「国民健康・栄養調査」によると、「糖尿病が強く疑われる者」 は男性18.7%、 女性9.3%に上るとしています。

総務省の今年6月1日現在の人口概算値は男性6,129万人、女性6,464万人ですから、それぞれの比率をかけると1,146万 人と601万人に達し、合わせて何と1,747万人!糖尿病は、もはや国民病と言っても差し支えないでしょう。

ご存じのとおり、糖尿病は膵臓から分泌されるインシュリンというホルモンが不足・低下することで血糖値の上昇を招く病気です。

さらに糖尿病は、インシュリン依存型(I型)と同・非依存型(II型)に分かれています。1型は比較的、若年層に多く、生命維持のためインシュリン注射が欠かせません。 II 型はもっとも普通にみられる糖尿病で、40代以上に多く、緩慢に発症し肥満を伴うことが一般的です。

もともと糖尿病になりやすい素質を持った人が、この病気の誘因となる過食、美食、運動不足といった生活をおくっているとてきめんです。 なぜなら、食事量(カロリー)が多いとインシュリンの消費量が高くなり、肥満であるほどインシュリンの働きが鈍くなって、その不足・低下を招くからです。

放置しておくと、網膜症、狭心症、心筋梗塞といった血管障害や、糖尿病性昏睡、神経障害など、命に係わる重篤な合併症を引き起こします。糖尿病は、油断ならない病気なのです。

■食養で克服した72歳男性

 ここで、松井病院・ 食養内科で指導をしたことのある患者さんの例を紹介してみしょう。身長160cmで体重60kgとやや小太りの男性 (72歳)。彼が糖尿病を発症したのは40代半ばで、以降、インシュリン注射と経口の糖尿病薬療法を実施してきました。また食事療法も実行していたと言います。

しかし症状は好転せず、入院時の血糖値は300mg/dl以上に達し、基準値の倍を上回っていました。 そこで血糖値を下げて、かつその数値を維持するための食事療法を開始しました(補助手段として運動療法も併用)。主な内容は、過食を避け摂取エネルギーを制限し、同時に栄養のバランスを保つことです。

具体的には、精白米を未精白米に切り替えて糖質を減らし、タンパク質は主に植物性食品である大豆製品から摂るようにしました。また動脈硬化を引き起こしやすいので動物性脂肪は極力避け、調理には不飽和脂肪酸が豊富な植物性油を用いました。ビタミンとミネラルは野菜と海草から摂取するように努めました。

入院以来20日間、このような食事療法を続けた結果、血糖値は下がり、コントロールできるようになって退院しました。以後、摂取エネルギーを一日1,600kcalまでに、との指示を良く守って薬剤も不要なまま過ごしていると聞きました。

わたしがつくづく思うのは、糖尿病ほど、食養の重要性を如実に示す病気はない、ということです。もちろんほかの病にとっても食事療法はとても大切です。でも糖尿病の場合、その治癒の可否は、ほぼ食事内容にかかっていると言ってもいいくらいなのです。

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第19回

食事療法で便秘&下痢に立ち向かう!

便秘と下痢と言えば、方や“出なくて“苦 しみ、こなた“出過ぎて“苦しむ、という正反対の症状を示しています。そこで今回は両症状をまとめて取り上げ、食養でどう対処すれば良いかを考えてみます。まずは便秘から。

便秘の要因は大きく分けて二つあります。一つは症候群便秘と呼ばれ、腸狭窄や直腸ガンといった腸の病気に由来します。もう一つは、一時的または慢性状態の便秘で、前者は旅行先など環境や食事内 容の変化等によって引き起こされ、後者は習慣性(常習性)便秘とも呼ばれて、大腸の機能異常が要因となります。

機能異常とはつまり、大腸の運動が減退して腸の内容物(大便)が長く停滞し、固く太くなって腸内移動ができなくなる症状のことです。これが習慣性便秘の大部分を占めていて、多くは下腹部に膨満感を覚えますが、長く続くと食欲不振や頭痛、倦怠感を訴える場合もあります。

習慣性便秘にはほかにも過敏性腸症候群の人に見られる「けいれん性便秘」と呼ばれる症状もありますが、ここでは省略します。

浣腸や下剤に頼らず、食養で便秘に対峙する方法は以下

①主食を、腸のぜん動運動を盛んにする繊維分を多く含む未精白米にする。②繊維分や、ビタミン、ミネラルを多く含む野菜・海草を積極的に摂る。③便を柔らかくし腸管の滑りを良くするゴマ油やオリーブオイル、亜麻仁油といった植物油を使う。④繊維分をほとんど含まず、ぜん動運動を緩慢にする肉類は避ける。⑤還元水などの水分を十分摂る。⑥身体を冷やす果物やぜん動運動が鈍る砂糖を摂りすぎないようにする。

■下痢のさいの食事療法

 さてもう一方の下痢です。これは、大腸の運動が高じて腸内残存物が異常に早く通過するため、水分が腸内で吸収されず大便の水分含有量が増えて、泥状または水様状態となることです。急性と慢性があり、排便回数が一日に何十回にも及ぶこともあって、たいへん辛い症状です。原因はさまざまです。果物や生野菜、消化に悪く脂質の多い食品やアルコール飲料、香辛料、砂糖等の多量摂取が引き起こすことがあります。そのほか、腸内での食べ物の異常発酵や、暴飲暴食、食中毒も要因になりますし、アレルギー性や神経性、さらに冷えによる下痢なども生じることがあります。

下痢が引き起こす症状も、発熱、倦怠感、吐き気、腹部の痛み等々、実に様々ですが、高じている大腸の運動を正常に戻すためには、何といっても食生活の改善が肝要です。

下痢で怖いのは、体液と様々なミネラル分が失われること。そこでこれらの補給が重要になります。野菜類は生を避け煮てから摂ることが大切です。油脂類では揚げ物や炒め物は避け、できるだけゴマ料理にで摂取することが肝心です。

主食は未精白米をお勧めします。繊維分が多く下痢に不適当と思われるかもしれませんが、よく噛んで食べると、唾液の中のでんぷん分解酵素が働いて消化吸収を助けてくれます。食事療法とは別に、必要に応じ医師の管理下で実施する「絶食療法」という手段もあることを付け加えておきます。

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第20回

慢性胃炎を克服するための食生活とは

今回は胃の病気の中で最も多い「胃炎」を取り上げてみます。胃の粘膜に炎症が起きた状態が胃炎で、 急性と慢性があります。急性は、食べすぎや飲みすぎ、ストレス、タバコの吸いすぎなどの生活習慣が主な要因です。症状は胃痛、吐き気、下痢などで、ひどくなると嘔吐や吐血、下血を伴う場合があります。

なお、ストレスが引き起こすケースを 「神経性胃炎」とする場合があります。

慢性の場合、原因の約8割が胃の中に生息するピロリ菌と呼ばれる細菌の働きで、その他、薬の副作用によっても引き起こされる場合があります。

ピロリ菌は胃中の強力な酸の中で生きている菌で、胃酸から身を守るため常に出し続けているアンモニアが、胃の粘膜を傷つけ、慢性胃炎を生じさせると考えられています。

慢性胃炎の場合、胃の中の酸が高くなっている過酸性と低くなっている低酸性があり、前者では胸やけ、げっぷ、胃部の鈍痛などが主な症状です。後者は、脱力感、衰弱、疲労を訴えることが多く、下痢気味にもなります。

急性胃炎は一般に治りやすい病気で、数日あれば軽快することが多いのですが、慢性胃炎は治りにくく、対策が難しくなってきます。したがってここでは、慢性のケースを中心に、治療のため重要なカギを握る食生活の改善、つまり食養について述べてみることにします。

■絶対避けたい食品類

前述のように、慢性胃炎の場合、過酸性と低酸性があり、食養も分けて考える必要があるかもしれません。しかし、わたしが師事した日野(あつし)医博の 「日野式食養法」ではさほどの区別はしていません。というのも、胃だけを問題にするのではなく、身体全体の健康度の向上を第一に考えるためです。

慢性胃炎の人の食生活で何より大切なのは、胃を刺激し負担をかける食品を避けることです。熱すぎ、冷たすぎる食品、強い酸味や塩辛いもの、そして香辛料の効いたものなどは避けます。また、アルコール飲料と炭酸飲料のような嗜好飲料はご法度です。

食品では、脂っこいものは、胃に留まっている時間が長いので避けるようにします。具体的には、肉の脂身、ラードを用いた揚げ物、炒め物は好ましくありません。魚は白身を選びましょう。必須脂肪酸を豊富に含む植物油やゴマは摂りたい食品ですね。タンパク質を摂るには大豆製品がお奨めです。

何より肝心なのは、よく噛んで食べることです。加えて、胃腸症状の改善が期待できる還元水の飲用もいいかもしれません。

わたしが勤務していたころの松井病院「食養内科」では、食生活の指導だけでなく、日野博士の指示で慢性の患者にも「絶食療法」を実施することがありました。最後にこの療法を紹介してみます。

絶食療法では、胃の組織の再生や身体全体の健康度の向上が期待されます。というのも、絶食を機に、その後の食養が順調にいけば、当然、身体全体によい効果があるからです。

ただし、絶食後に体調がよくなると、食欲が高まって過食に至り、体調が悪化して絶食前より症状が悪くなる恐れがあります。患者はこの点をよく理解し、強い意志を持つ必要があるのです。