児玉陽子の正しい「食養」のすすめ

エナジック代理店向け広報誌「Global E-Friends」

2019.11.1~2020.12.15に23回掲載されたものを転載しました。

第21

いまなお怖い結核に挑む食事療法

結核と言えば、かつては患者数も多く、「不治の病」と恐れられました。厚労省のデータによると、1950年の結核による死亡者12万人を超え、死亡 (要因) 順位も1位でした。

それが2019年には、それぞれ約2,000人と31位にまで劇的に下がり、もはや結核は「過去の病気」 とみられるようになりました。

そうはいっても、新規の結核患者は昨年、14,460人にのぼり、中でも20~29歳の罹患率が60歳以上の高齢者に次いで高く、若者の間の感染の広がりが心配されています。

結核菌に感染すると、体重減少、食欲減退、倦怠感、微熱などの症状が出始め、咳、痰、胸痛、呼吸困難等の胸部症状を伴うようになります。進行すると、血痰、喀血、肋膜炎、さらに高熱に襲われてしまいます。

治療方法は、薬剤の服用のほか、環境、安静、栄養が極めて大切になります。よい生活環境下で精神の安定を保ち、正しい食養によって人間が本来 持っている自然治癒力を高めていく 必要があるのです。

結核は長期にわたる疾患ですか ら、とくに毎日の食事面の配慮が欠かせません。

わたしの恩師であり、松井病院食養内科で一緒に働いた日野厚博士は、結核治療上の食生活では、しきりに 「甘いものに注意を!」と喚起していました。

■白砂糖の摂取に注意!

結核菌に感染すると、血液中の白血球が動員され菌を食べようとします(貪食(どんしょく)作用)。ところが白砂糖を一定量、摂取すると、この白血球の貪食作用が妨げられ、抵抗力が弱くなるというのです。

したがって、食養内科では患者さんに対し、白砂糖の摂取を制限し、さらに卵焼き、すき焼きなど動物性タンパク質に砂糖を加えた料理にも注意を促しました。

ほかに、食養内科で結核の患者さんによく出していたのが、「鯉こく」です。にが玉(胆のう)だけを取り出した鯉を筒切りにして、ゴボウと一緒に茶殻を入れた水で3~4日煮込む料理です。これはかなり効果がありました。

結核は全身消耗性の病気だけに栄養量を増やしますが、他方、肥満を懸念して、動物性タンパク質や脂肪は過剰に摂らないよう注意する必要があります。逆にビタミン、ミネラルは、緑黄色野菜や海草で豊富に摂るようにします。主食は玄米などの未精白米に切り替え、タンパク質は、大豆、ゆば、豆腐、納豆、豆乳、ゴマなどで摂り、 動物性食品はシラス干し、 小魚、 白身魚を中心にすると効果的です。また、 果物のような身体を冷やす食べ物は避けるようにします。 これらが、結核と闘う食養の定番と言えます。

児玉陽子の正しい「食養」のすすめ

エナジック代理店向け広報誌「Global E-Friends」

2019.11.1~2020.12.15に23回掲載されたものを転載しました。

第22回

肥満解消のための食生活はこれだ!

「肥満」といえば、病気から生じる一部のケースを除く大部分が、食べ過ぎ=脂肪の過剰蓄積によって引き起こされます。そこで食生活の改善こそが最良の解決策であり、まさに食養の出番なのです。

肥満を計る指数で一般的なのが、皆さんご存知のBMI(Body Mass Index)ですね。計算式は、[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]です。皆さんもご自分の身長・体重から計算してみてください。日本では日本肥満学会が18.5~25未満なら普通で、それ以上は肥満と分類しています。

改めて肥満の原因を述べてみますと、糖質・脂肪・タンパク質など食物で摂取するエネルギーを上回るために起こります。 このように過食と肥満は密接な関係にありますから、何といっても、正しい食生活こそが肥満防止(または減量)の決め手なのです。

肥満が怖いのは、身体に負担がかかり、多くの病気を引き起こすためです。実際、肥満の人たちの多くが、糖尿病や痛風、肝硬変、胆石などから心臓病、脳出血といった重篤な病まで、何らかの異常をきたしています。そこであるべき食養を以下に示してみました。

まずは「食べ方」ですが、間食や夜の大食は厳禁です。早食いやまとめ食いも避けましょう。味付けは全体的に薄くする方が、賢明です。

■ 「GI値」の低い食品を!

食事内容としては、できるだけ「グリセミックインデックス(GI値)」の低い食物を摂るように心がけましょう。GI値とは「食品ごとの血糖値の上昇度合いを表現する数値」で、通常、GI値「60」を目安とし、それ以上の食品は避けた方が良いとされています。

たとえば精白米は80以上ありますが、玄米は55程度、という具合で、なるべく精白した食品は避けましょう。それらは必要なビタミン、ミネラルが取り除かれて栄養価が少なく、血中の中性脂肪を上昇させやすいという性質もあります。

また、上白糖などは100を超える高いGI値ですから、甘味食品には十分注意が必要です。

一方、未精白食品は栄養素が多く、繊維にも富んでいるため咀嚼(そしゃく)回数が増えて満足感を味わうことにもつながってお勧めです。

大切な栄養素のタンパク質は肉や卵、魚類からよりも大豆製品などから多く摂ることを勧めます。ビタミン、ミネラルは、エネルギーが低い野菜や海草類で十分に摂取しましょう。

最後に減量を始めるに当たって注意すべき点を。高度の肥満であっても、最初から急激に熱量を低下させることは危険です。徐々に減量に体を慣らしていくようにしましょう。また、アルコール類は食欲をそそり糖分の摂取にもつながるので、禁酒が最適です。

努力して標準体重に戻ったら、今度は労働と運動の量も踏まえた適正カロリーを維持していきましょう。

児玉陽子の正しい「食養」のすすめ

エナジック代理店向け広報誌「Global E-Friends」

2019.11.1~2020.12.15に23回掲載されたものを転載しました。

最終回

“健康長寿”のための食生活の基本とは!?

いよいよ今回が連載の最後の回となりました。長い期間に渡り、「食養」に関する歴史、理論、実践等について述べる機会を与えてくださったことに感謝を申し上げます。

そもそも「食養」とは、「日々の食事を通じた病気予防と治療の方法」を意味します。連載の最後に当たり、 この食養に関する原理原則を述べて締めくくりたいと思います。

食生活アドバイザーとしてのわたしの原点は、日野厚医学博士と共に働いた松井病院食養内科にあります。そこでわたしは、日野博士の提唱する”食養論”に則った食事療法を患者さんに日々、実践していました。

その基本姿勢は、一人ひとりの患者さんの症状、体質、年齢、それまでの食事傾向等々、いろいろな要素を検討して食事内容を決め、実際に供する、というものでした。その具体的内容や効果は、2019年12月号の連載第11回 「肝機能障害」以降、前号までの連載の中で、病気別に記述してきたとおりです。

 松井病院食養内科で積み重ねたこうした経験を基にして、わたしは日野理論に自分なりの修正を加え、現在、提唱している食養論を確立することができました。その本質は、ズバリ、「以前の日本食に帰ろう!」です。

■手本は「以前の日本食」に

 日本では1960年代の高度成長期以降、食生活に大きな変化が生じました。ひと言でいうと著しい 「西洋化」です。たとえば肉類や乳製品の摂取量が増えるなど、高カロリー、高タンパク、高脂肪で糖分、塩分過多の食品が普通の家庭でも日常的に食べられるようになりました。こうした食事内容が、いわゆる生活習慣病(当時は成人病と言いましたが)の増加を招いたとされています。

加えて食品添加物などの合成化学物質の摂取や、農薬と化学肥料を大量使用した農作物の影響を疑われる事態も生じました。その典型例がアトピー性皮膚炎の増大でしょう。

そこで見直されてきたのが「以前の日本食」なのです。わたしが提唱している食養も、それを基本としています。具体的には、主食を玄米とし、砂糖は少々かつ薄塩・薄味で、タンパク質は小魚・白身魚や豆腐などの大豆食品から摂取し、野菜(とくに緑黄色野菜)や海草を多く摂るーーという内容です。

加えて、土地と人間の切り離せない関係(身土不二)を重んじて地産地消を心がけ、「一物全体」の考えから、野菜は根も葉も捨てず魚は皮も骨も内臓も食べて、強い香辛料や刺激物を避ける、といったことも大切です。食べ方では何と言っても「よく噛み腹八分にすること」が肝要です。飲用や調理には「還元ウォーター」が最適ですね。

こうした食生活を実践することで、皆 さんはきっと「健康長寿」を手に入れる ことができるでしょう。参考にしていただければ幸いです。