児玉陽子の正しい「食養」のすすめ

エナジック代理店向け広報誌「Global E-Friends」

2019.11.1~2020.12.15に23回掲載されたものを転載しました。

第11回

肝硬変を治した「肝臓食」のキモとは?

松井病院食養内科には、「内科」と銘打ってはいたものの、実に様々な症状の患者がやってきました。 診察科目でいうと、循環器科、消化器科、呼吸器科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、皮膚科、アレルギー、老年病、小児科、そして心療内科などなど。産婦人科関係の患者だって来るほどで、老若男女が押し寄せてくる盛況ぶりでした。しかもそのほとんどが、ほかの病院を転々として、もはや手の施しようがない、とされた重篤な患者でした。

そんな患者の中で印象に残ったケースを、これから順次、取り上げていってみたいと思います。

まずは54歳の男性Aさん。身長が174cmあり体重が74kgでやや太り気味。彼は40歳の時に黄疸があらわれて2週間ほど入院した経験があります。その後、元気になったものの、食養内科に来る5年前に全身がだるく立っていられないほどひどくなり、自宅近くの病院に入院しました。

検査の結果、 肝機能を測るさまざまな検査で基準値を大幅に上回り、明らかに肝機能障害が認められました。

■高タンパク食は忌避

 近所の病院に入院している間は、肝機能障害に効果があるとされた高タンパク・高エネルギーの食事を摂るよう指示を受け、牛乳・卵・新鮮な野菜などを摂取していたといいます。しかし倦怠感が取れないどころか、ひどくなってしまい、また太り始めたことにも気づき「おかしいな」と思った段階で食養内科を受診したのです。

前号で紹介したように、食養内科では初診に時間をかけて、症状だけでなく、患者の生活や仕事などをいろいろな角度から聞き出して治療に役立てます。

ここではAさんから聴取した食生活に限って紹介してみます。まず大の酒好き。晩酌で日本酒を1~1升半も飲んで いたというのですから、 まさに 「鯨飲」ですね。さらに肉類など脂っこい食べ物や香辛料のきいたものが好きで、おまけに清涼飲料水も好んで飲んでいたとのこと。こんな食生活を送ってきたツケが、全身の倦怠感、口渇、肩こり、便秘、腹部の膨満といった症状に表われてしまいました。加えて、右ろっ骨下に肝臓のでこぼこがあり、皮膚の表面から血管が透けて見えるクモ状血管腫も認められました。X線検査では、食道と胃に静脈瘤があり、脾臓も腫れていました。結局、肝硬変と診断されました。

松井病院に入院すると、ただちに食事療法を開始。食養内科では、高タンパク・高エネルギーの食事ではなく、バランスを重視した1日1600kcalの肝臓食を出しました。

その結果、 2週間後には肩こりと便秘がおさまり、3カ月後には体重が13kg減って疲労感もなくなりました。 静脈瘤も安定し、6カ月後には週の半分の就労が可能となり、1年後には自覚症状が消えてフルタイムの就労ができるようになりました。Aさんはこうして社会復帰した のです。彼はたいへん喜んでいました。

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