児玉陽子の正しい「食養」のすすめ

エナジック代理店向け広報誌「Global E-Friends」

2019.11.1~2020.12.15に23回掲載されたものを転載しました。

第9回

本邦初「食養内科のユニークな試み」

わたしの恩師である日野厚医学博士は1969年から北品川総合病院の第3内科部長として、本格的な食養研究とその実践を開始しました。その後、さいたま市の岩槻病院を経て、7811月に東京都大田区の松井病院に本邦初の食養内科が開設されると、日野は食養内科部長に就任しました。ついに食養(栄養科学)と東西医学とを総合して診察・治療に当たる専門の場ができたのでした。わたしも日野のスタッフとして同じ職場で働くことになりました。

食養内科には老若男女、実にいろいろな症状の患者がやって来ました。まずは食養内科で食事療法を試みた症例(病名)をあげてみましょう。

胃炎・胃潰瘍・胃下垂、十二指腸潰瘍、便秘・下痢、肝炎 肝硬変、胆石・胆のう炎、腎炎・腎盂炎・腎不全・ネフローゼ、高血圧・動脈硬化症、心臓病、糖尿病、肥満症、痛風、アレルギー(喘息)、肺結核、貧血、自律神経失調症、神経痛、慢性関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、ガンーー。

あらゆる「診療科」の患者がやって来るので、まるで「病気の見本市」のような状態でした。中でも、比較的多いと感じられたのが、腎炎、肝炎、糖尿病、そしてガンでした。

こう書くと、皆さんの中には「内科」なのに、なぜこれほど多くの診療科の患者がやって来るのか、不思議に思う人がいるかもしれません。

■末期患者の“駆け込み寺”

理由は比較的単純です。さまざまの症状の多くの患者が大学病院や専門病院をたらい回しにされ、重篤で末期的な状態でやって来ました。ガン患者がその典型でしたが、もはや病院で手を施すことがなくなり「あとは食事療法に頼るくらいか」という認識の医師が送り込む、もしく は患者自身がそう認識してやって来る、という状態でした。

もう一つの特徴は、漢方を始めとするさまざまな民間治療・施術に拘泥し、現代医療の診断・治療を受けぬまま手遅れになってやって来る患者が多かったことです。そういう患者に接すると、「早期にいまの医療を受けていれば助かったのに」と、わたしはひどく残念な思いに襲われました。

さらに病気の種類で言いますと、1980年代半ば以降、アトピー性皮膚炎の患者が目立って多くなってきたことが特徴的でした。

これなど、食生活の激変(欧風化)や食料生産の環境悪化などがもたらした結果ではないでしょうか。 高カロリー・高タンパク・高脂肪の肉類や糖分・塩分の過剰摂取などによって栄養バランスが崩れ、加えて、 食品添加物などの化学物質の摂取、農薬や化学肥料の大量使用等々による影響もあってのことと考えられるのです。

いずれにしろ適正な栄養摂取をおこなうための「食養」がいかに大切か、わたしは松井病院での日々の業務を通じて嫌というほど学びました。そこで次号より、同病院でのわたしの経験をお話しすることにより、「食養」の大切さを浮き彫りにしてみたいと思います。

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